四国八十八ヶ所を巡礼する人をお遍路さんといいます。昔は歩いて一ヶ月も二ヶ月もかかってお参りをしたそうです。現在はバスや自動車などを使う方が多いようですが、十日から十二日は必要だそうです。それでも、昔のように歩いて巡礼される方もいらっしゃるようです、とても大変ですが、その苦労の分すばらしい信仰体験をつまれるのです。
お遍路さんの白衣の後ろには「南無大師遍照金剛」と書いて有りますね。また道中、心の中で南無大師遍照金剛と御宝号を唱えながら修行されるのです。
南無大師遍照金剛にはどんな意味が含まれているのでしょうか。一緒に考えていきましょう。
「南無」はインド語のナモ、ナマス、ナマッハを音写つまり発音の音に近い文字で作った当て字です。意味は帰命、帰依する、永遠に、心から信じお従い申しますという信仰の誓いを表します。
「大師」は偉大なる師、という意味で日本では大師号として朝廷から徳の高いお坊さまに贈られました。お大師さまは空海と言う僧名ですが弘法大師という大師号を九二一年朝廷から給わりました。日本では二十数名の高僧に贈られていますが、「大師は弘法にとられ太閤は秀吉に取られ」と言われるよう大師と言えば弘法大師、お大師さまのこと表すのです。
「遍照金剛」はお大師さまの灌頂名です。大日如来と言う仏さまの別名なのです。奈良の大仏さまは正式にはルシャナ仏ですが、その別名は大日如来さまなのです。お大師さまが中国に渡り真言密教の教えを授かったとき、最後の仕上げとして灌頂と言う儀式を受けられました。
目隠しをして合掌した手にはお花を持ち、仏さま、如来さま、菩薩さまの書かれた曼荼羅の上にその花を投げるのです。仏さまとの縁結びとでも言いましょうか、お大師様の花は大日如来の上に投げられたそうです。二回して二回とも同じ場所に投げられたそうです。この不思議に驚かれた恵果和尚はお大師さまに大日如来の別名遍照金剛を灌頂名として授けらたのです。
「遍照」とは仏さまの慈悲の光明で照らされていると言うことです。夜に街を歩いても街灯が有れば明るくて安全です、営業時間の終わったお店でも店内には電灯が灯されて防犯灯の役目をしています。暗闇では犯罪が起こりやすく悪がはびこりますが、明るいと安心出来ますし、悪ははびこることが出来ません、善の世界になるのです。太陽でも、電灯でも物に当たれば影が出来ますが、仏さまの私達を救おうとする慈悲の優しい光は影を作ることなく世界の隅々まで照らされているのです。
「金剛」ダイヤモンドです。ダイヤモンドは最も強くて堅い物質です。またその原石を磨けばその輝きは素晴らしいものになります。私達凡夫をこの苦しみから救ってあげるんだと言う仏さまの堅い決心と不滅永遠の徳を表しています。
遍照金剛、大日如来さまは全ての神仏の根本の仏さまであり、その大日如来の一徳一徳を表すと各々の仏になるのです。寿命を表すと阿弥陀さま、優しさを表すと観音さまと言う具合です。
南無大師遍照金剛とお唱えになるのは弘法大師お大師さまを拝み、その後ろには大日如来さまが控えられ、また全ての神仏へとつながっているのです。御宝号の深い意味を噛み締めながら「南無」と信じるこころを開いて、「大師」お大師さまに守られて、「遍照」他人に対しても優しさ思いやりを持って「金剛」自分自身に厳しく、そういう修行の日暮らし信仰を持ち、お大師さまと同行二人の人生の道を、幸せに向かって一歩一歩精進して参りましょう。